「ダイゴさーん!」
オメガ君です。 今年になってからオダマキ研究所にやってきた、とってもマジメな男の子です。
「大誤算~!」
アルファちゃんです。 今年になってからコンテストデビューした、新米アイドル見習いの女の子です。
2人は仲良くトクサネシティのダイゴさんの家にやってきました。
ダイゴさんは読んでいた本のページにしおりを挟むと、街はずれにある小さな家の扉を内側から開きます。
「やあ、オメガ君、アルファちゃん。
『だいごさん』を発音するときは、アクセントを最初の『だ』につけるべきだと僕は思うよ。」
普段はマイペースなダイゴさんですが、この発音間違いだけは、さすがに聞き捨てならなかったようです。
反応速度新記録です。 帰ってからルビーに報告したところ、「やるねぇ」とほめられました。
まあ、その話はさて置いて、オメガ君とアルファちゃんの2人は扉を開けたダイゴさんに詰め寄りました。
2人とも目がキラキラしています。 若いってまぶしい。
「あのっ、ボクたち質問があるんです!」
代表してオメガ君が切り出しました。 なにかな、と、ダイゴさんは返します。
「6頭身になる方法を教えてください!」
「どうやったら体を伸び縮みさせられるんですか!?」
「……」
ダイゴさんは無言でした。
「……」
オメガ君は固唾を飲んでダイゴさんを見ていました。
「……」
アルファちゃんが握ったげんこつの中で汗がにじみ出ていました。
「……ルビーとサファイアは兄弟石とも言われていてね、コランダムに鉄やチタンが混入すれば蒼い色のサファイアと呼ばれ、クロムが混ざれば赤く発色してルビーになるんだ。
ただし、クロムの混入度合が少なければピンクサファイアと呼ばれたり、あるいは多すぎれば……」
「ダイゴさんー、関係ない石の話に逃げるのやめてください!」
ダイゴさん逃げました。 無邪気な子供の質問にマイペースが崩壊しました。
ひとまず部屋の奥に戻ってお気に入りの石を触って落ち着きます。 ごつごつしてひんやりとした感触がたまらないと。
気を取り直しました。 閑話休題。
「……どうして、そんな質問に至ったのかな?」
「だって、ダイゴさん1人だけイベントシーンで6頭身じゃないですか!」
「CM見たもん!」
「ボクたち、比較的重要そうなシーンでも2.5頭身のちんちくりんだし……」
「先輩たちに話したら「3Dのくせに贅沢言うな!」って怒られちゃったけど。」
「バトルシーン以外でも6頭身でいられる秘訣を知れば、コンテストライブ!でも役に立つかもしれないって、アルファちゃんが……」
「アルファちゃんでーす!」
まるで餅つきのように合いの手を入れるオメガ君とアルファちゃんに、ダイゴさんは一息をつきました。
長い長い一息でした、1分くらいありました。
「……それは、僕が、僕だからとしか言いようがないね。
このチャートが二酸化ケイ素からなるように、僕が6頭身になるのも自然が僕に与えた節理のひとつなんだよ。」
おお、さすがダイゴさん。 オメガ君とアルファちゃんは目をキラキラさせながら同時にそう口にしました。
結局僕が1番強くてすごいんだよねは伊達じゃありません。
てんやわんやしていたダイゴさん家でしたが、子供たちに褒められてダイゴさんもまんざらじゃなさそうです。
「そういえばボク、ライボルトナイト見つけたんですよ!」
「あたし、フーディナイト!」
「すごいね、見せてくれるかい?」
いいですよー、とオメガ君から渡されたその石を、ダイゴさんはルーペで覗き込みました。
内側から輝くようなその光は、ポケモンと人間の絆を結ぶ石、メガストーンで間違いありません。
「うん、とてもいい石だ。 どこで見つけたんだい?」
「道端に落ちてました!」
「道端に落ちてました!」
ダイゴさんはいつも通りの笑顔でしたが、ほんの少しだけ唇の裏側を噛み締めていました。
主人公補正ってずるい。 こんな珍しい石、世界中探しても滅多に見つからないのに。
その日、ダイゴさんの勤めるポケモンリーグはいつもよりちょっと荒れたそうです。
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