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    13話「オタマロさん再び!」


    青い草の伸びる道をいくらか行くと、小高い丘と点々と続く広い水たまりが視界いっぱいに広がっていた。
    丘の上には何度も削られた痕の残る『試しの岩』が、振り返れば生い茂った木々の葉で先も見えぬ『ヤグルマの森』が、曲がり角の先まで延々と伸びている。
    キョロキョロと辺りを見渡し野生のポケモンがいないことを確認すると、トウヤは「はぁ~」と深くため息をつき、その場に腰を下ろした。
    「あー、疲れた。」
    戦ったり逃げたりにつき合わされ続けたミジュマルとミルホッグもため息をつく。
    『試しの岩』の近くにいい格闘ポケモンがいると聞いて、朝から1日かけてやってきたはいいが、道中野生のポケモンに襲われまくり。
    その都度、戦ったり逃げたりしてなんとか凌いできたが、目的の格闘ポケモンはいないし、トウコの言うとおりさすがに2匹では限界だ。
    ぐったりとした様子でトウヤがミジュマルとミネズミに食べ損なった昼食を与えると、ミルホッグの毛並みがチカチカと点滅した。
    トウヤはまだ気付いていない。 その点滅こそミルホッグの特性『はっこう』。
    光の加減により引き寄せられたポケモンたちによって、通常の2倍以上の遭遇を強いられていることに。




    「トウコちゃんによると! ポケモンはこーゆー草が生い茂った場所に隠れていることが多いらしい。」
    ホタチをぶんぶん振り回しながら後をついてくるミジュマルに話しながら、トウヤは青く茂った草むらをかきわけた。
    「それで、ポケモンも警戒するから特に珍しいポケモンはこっちが音を立てると逃げてっちゃうんだって。
     だから珍しいポケモンを探すときには、1度全然関係ないようなフリをして、向こうが動き出すのを待ってから……」
    しゃがみこんで気配を殺して、トウヤは辺りの気配を探る。
    どこからか、小気味いいカタン、カタン、という音が響いてきた。 これは聞いていた格闘ポケモンかも、と、トウヤは期待する。
    耳を澄ませると、息を落ち着かせ音のする方向へと走り出す。
    「飛び込む!」
    ガサガサと揺れる草むらに飛び込むと、ホタチを振り上げたミジュマルと一緒にトウヤは固まった。

    「だげ」
    「なげ」

    そこでは1羽の鶴……ではなく、青と赤の人の形をした2匹のポケモンが、自分の羽……でもなく、そこらの草を引っこ抜いて布らしきものを織っていた。
    トウヤの存在に気付くと青いポケモンは顔を赤くして、赤いポケモンは顔を青くして、胸と股間を隠す。
    どうやらすっぽんぽんということらしい。
    「あー……えっと……」
    「だげ」
    「なげ」
    見られてしまったからには、もうおじいさんとおばあさんのもとにはいられません……なんて展開になるわけもない。
    取り急ぎ足元に転がっていた葉っぱで身体を隠すと、青いポケモンと赤いポケモンはトウヤに怒りの表情を向けた。
    「えっと……」
    どう見ても話し合いが通じそうな様子じゃない。 というか、どう考えてもこの状況では自分がセクハラオヤジだ。
    トウヤはホタチを振り回すミジュマルをモンスターボールの中に戻すと、わき目も振らず逃げ出した。
    「ご、ごめんなさいっ!!」
    「だげー!」
    「なげー!」
    向こうもすっぽんぽんのまましつこく追ってくることはしなかったが、トウヤにとってはそれは問題じゃなかった。
    見てはいけないものを見てしまった罪悪感。 訳も分からぬまま全力疾走。
    足元も見ず走ったものだから、トウヤは思い切りけつまずき、こけ転がった。
    鼻をすりむき、顔を押さえる。 起き上がろうと小さくうめくと、頭の上から「マロマロマロマロ」と聞き覚えのある鳴き声が耳の中に入ってきた。


    顔を上げると、先日Nが使っていたオタマジャクシがトウヤのことを見下ろし、マロマロ声をあげていた。
    起き上がるとオタマジャクシは泥のついたトウヤの顔にぴゅーっと水をかける。
    「あ、ありがとう……」
    「まーろまろまろまろまろ!」
    泥のついた顔をゴシゴシと拭うと、トウヤは訳もわからず走ってきてしまった現在地を確かめる。
    ……と、いっても、森の中でそうそう景色が変わりばえするわけもない。 目の前のオタマジャクシのように困ったハの字眉毛で考え込むと、トウヤはふと、目の前にいる3匹のポケモンに視線を向けた。
    「オタマロ、マメパト……ドッコラー!?」
    博物館の前で会ったNのポケモンと同じ顔ぶれ。 トウヤは慌てて立ち上がるとミジュマルのモンスターボールを手に取る。
    しかし、思いのほかのんびりとした空気に出した手を引っ込めた。
    クルルル、と、マメパトが穏やかな鳴き声をあげると、ゆるんだ緊張の糸はもう元には戻らなさそうだ。

    「な、なにしてるの、ここで……? Nは?」
    「まーろまろまろまろまろまろ!」
    聞くだけムダだった、と、トウヤはちょっと後悔した。 このマロマロ星人、切れ間なくマロマロいうだけで意思の疎通など図りようもない。
    仕方なく耳を澄ましてみるが、近くにポケモンの気配はすれど、人間の気配など微塵も感じない。
    眉を潜め、なんとかこの状況を把握しようとトウヤが頭を悩ませていると、マロマロマロ、というオタマロの合図を期に、寄り集まっていたポケモンたちが全員バラバラの方向に歩き出した。
    「クルルルル……」
    「コララー」
    「え……え、え?」
    言葉は分からずとも、状況が「じゃあ解散!」ということぐらいは理解する。
    止める間もなくマメパトは空に飛び立ち、ドッコラーは草の向こうへ。
    残されたオタマロを見て、トウヤは小さくため息のようなものを吐いた。 一体全体この状況、どうしたらいいというのか。





    「トウコちゃんが言っていた! ポケモンはこーゆー草が生い茂った場所に隠れてるって!」
    「……知ってるよ、ベル。」
    握りこぶしにぎゅっと力を入れて声をあげたベルの言葉を、チェレンは疲れがちな低めの声であしらう。
    高い木々が立ち並ぶヤグルマの森を見上げ、ベルは「おお~」と感動っぽい声をあげた。
    なにしろこんな遠くまでくるのは初めての経験。 街と道路続きだった今までの道のりからすれば、景色の変わるここに入ることは、ベルにとってはちょっとした冒険だ。
    「すごいねー、高いねー、暗いねー、広いねー!
     格闘ポケモンってこんなとこにいるんだね、森の中だとポケモンも強くなったりするのかなあ?」
    「……ベル。」
    「よおし!」と意気込み、ベルはポカブの入ったモンスターボールを握り締める。
    チェレンの話も聞かず、ベルはそこらの虫ポケモンに勝手に勝負を挑み始めていた。
    何度か呼んではみるが、彼女も聞く耳を持たない。
    衣がコゲて逃げ出したクルミルを物足りなそうに見送るベルに再度呼びかけると、ようやく「なに?」という返答が返ってきた。 ちなみにこれで15回目だ。

    「……言いにくいけど、この森に格闘ポケモンはいないよ。」
    やっと言えた、とチェレンは深くため息をついた。
    一瞬目が点になったベルは自分のポケモン図鑑をぐちゃぐちゃのカバンの中から引っ張り出すと、電源をつけることもせずにチェレンにつめかかる。
    「でもでも、ポケモンセンターのお姉さんが格闘ポケモンを探すならヤグルマの森ですよって言ってたよ!」
    「……それは外部の『試しの岩』。 ここは、虫や草ポケモンの集まる奥地だよ。」
    あからさまにがっかりした顔をしたベルに、チェレンの胸が少し痛んだ。
    出発前から何度も言っているにも関わらず、ついてきてしまったベルもベルなのだが。
    でも、と、ベルは前置きすると、チェレンに向かってちょっと攻撃的な表情を向ける。
    「だったら、チェレンはどうしてこっちにポケモン捕まえにきたの? 格闘ポケモンいないんでしょ?」
    「……相手がノーマルだからといって、一時しのぎに格闘タイプを捕まえるんじゃ芸がないと思ってね。
     もっと継続的に使えるポケモン……ツタージャのタイプ相性を補えるヒヤップを捕まえにきたんだ。」
    「ヒヤップって……ジムリーダーのコーンさんが使ってた、あの……?」
    肯定の返事をすると、チェレンは自分のポケモン図鑑を開きページを呼び出した。
    「……この森にいるらしいからね。 シッポウのジムリーダーに挑む前に捕まえておこうと思って。」
    そう出発前に説明したはずだったが、やはり聞いていなかったらしい。
    しきりに感心した様子でうんうんとうなずくと、ベルは片方の手でバッグの肩ヒモを握り締めて、もう片方の手をビシッ!とチェレンに突きつけた。
    「それじゃ、あたしもバオップ探す! どっちが先に捕まえるか勝負よ、チェレン!」


    言葉を挟む隙も与えず走り出したベルを、チェレンはあんぐりと開いた口で見送った。
    少ししてから意識を取り戻し、片足をトントンと揺らして考え込む。
    どくけし……は、大丈夫なはずだ。 昨日必要以上に購入しているのをチェレンは見ている。
    迷子……は、なるかもしれないが、そこまで手を加えるというのは野暮というものだろう。 ベルは天然だが方向音痴ではない。 タウンマップもあるんだから帰ってはこられるはずだ。
    結論。 今は自分のことに集中すべきだろう。 頭の後ろをかくとチェレンは森の中をゆっくり歩き出す。

    …… ……。

    「チェレンってイシバシを叩いて殴るって感じだよな~。」
    ……思えば、1年と少し前、本を読んでいた自分にそう切り出したのはトウコだった。
    唐突に告げられた謎の診断に、チェレンの口は『~』の形になる。
    「……“石橋を叩いて渡る”じゃなくて?」
    「そーそー、それそれ! メッチャクチャ慎重で人の話ばっかしてんの!」
    トウコの足元でゾロアがイシシッと笑う。
    草むらで倒れていたこのポケモンを見つけたときも、チェレンは1歩離れたところで他の子供たちの様子を伺っていた。
    反論も出来ず、チェレンはメガネのツルに触れる。
    「チェレンらしいっちゃらしいけど、時々、掴めるチャンスまで逃すんじゃないかって心配になるんだよなー、トウコお姉さんは。」
    お、と何かに気付いたように手を叩くと、トウコはチェレンに人差し指を向けた。
    「チェレンだけに?」
    「……何のシャレにもなってないよ、トウコ。」


    「うわっ!?」
    頭の上を大きな羽音とともに風が通り過ぎて、チェレンは思わず悲鳴じみた声をあげた。
    見上げると、少し離れたところでこんな森の奥にいるはずのないマメパトがこちらを振り返り首をかしげている。
    ポケモン図鑑を取り出そうとしたが、首を振って自分で自分を否定するとチェレンはホルダーからモンスターボールを引きちぎる。
    「タブンネ!!」
    「ぶーねっ!」
    飛び上がったピンクのポケモンが、マメパトのとまる枝を根元から揺さぶった。
    突然のことに慌てたマメパトが「くー!」と鳴き声をあげて羽をばたつかせる。
    「『おうふくビンタ』だ!!」
    逃すまいとがっちりと足を踏み込むと、タブンネは枝を蹴って飛び上がり、往復どころか真上からの一撃でマメパトを叩き落した。
    草の上に落ちたマメパトを少し気の毒に思いながらも、チェレンはバッグからヒールボールを取り出す。 既に体力は削れている、使うのはこれで充分だ。

    「……ふっ!」
    ほとんど声もあげずにチェレンがボールを投げると、マメパトは明るい色のモンスターボールの中に吸い込まれた。
    チェレンはポケモン図鑑を使い、マメパトの状態を確かめる。
    着地したタブンネがよちよちと近づいてくると、チェレンは顔を上げ、そのふんわりした頭をなでた。
    「……ありがとう、タブンネ。」
    「ぶンね~」
    嬉しそうに目を細めると、タブンネはチェレンから渡されたオレンの実を少しだけかじる。
    チェレンはマメパトの覚えている技、ポテンシャルなどを一通り確認すると、ふと気付いたように顔を上げてタブンネの方へと視線を向けた。
    「……タブンネ、1つ思いついたことがあるんだけど。」
    「ぶねっ!」
    「いや、バトルのことじゃなくて。」
    シュッシュとシャドーボクシングを始めたタブンネに向かってチェレンは突っ込みをいれる。
    「……キミのその聴力を使って、ヒヤップを探すことは出来ないか?
     僕としても、ゲットは早めに終わらせて、早くキミたちのレベル上げを始めたいからね。」
    「ぶね!」
    敬礼もどきの所作をすると(しかしタブンネは手が短く頭まで届かなかった)、タブンネは目を閉じ耳を澄ませ、ヤグルマの森一帯の気配を探る。
    ぴん、と耳の触覚が伸びると、タブンネは北の方を睨み、走り出した。
    口元に笑みを浮かべながら、チェレンもその後を追う。





    「こちらの骨格は、ドラゴンタイプのポケモンですね。
     おそらく世界各地を飛び回っているうちになんらかの事故にあって、そのまま化石になったようです。
     この石はすごいですよ、いん石なんですよ!
     なにかしらの宇宙エネルギーを秘めています! まあ、正体が分からないから「なにかしら」としか言えないんですけどね!
     こちらの石は砂漠で見つかったのですが、古いこと以外には価値がなさそうなものでして……
     ……まあ、いいですよね! キレイですし! ここ博物館ですし! たまにはこんなものがあっても!」
    シッポウ博物館副館長キダチの説明を受ける間、トウヤはずっと無言だった。
    頭の上がじっとりと重い。 絶え間なく耳元でまろまろ言われ続け、段々と頭も痛くなってきた。
    「まーろまろまろまろまろまろまろ!」
    「あの……助けてください。」
    「トウヤ君、実に個性的なポケモンを捕まえてきたねえ、ママとの勝負が楽しみだよ!
     それでね、こっちが昔ある地方でお祭りが開かれるときに人々がつけていたという仮面、そっちが……」
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